なめらかな日々

水のように生きたい

寒さのなかで耽る時間、師走を縫って

 ゆびさきに冷気が乗る。気候の変動に抗えず、両手をこすり合わせる。可視化された吐息を「はっ」と吐く。小学生のときもやっていたこと。キタキツネみたいなふわふわのストールを首に巻きつけると、夏に比べて伸びた髪が視界に入る。染めたっきり染め直しもせず、毛先に向かって栗色になったミディアムショートの毛先がぽわんと浮き立つのが、冬感があって良い。

 寒空を見上げながら歩く。文字通り上を向いて歩くので、不注意極まりない。周りに人がいないか見渡すと、屋台の人が道の端に風呂敷を広げようとしていた。ここのスポーツジムの前で開く屋台の男性スタッフが格好良かったように記憶しているが、不在。ふらふらと避けて、また空を見ながら耽る。カネコアヤノを聴きながら。

 頭にあるのはまず、今書いている小説のこと。主人公の性格が知らず知らず歪んでいるのをどうにかしたい。浮遊感のある甘さと、ティーンエージャー独特の愚かさや毒々しさが共存した小説を書きたいと考えているとそうなる。もちろん主人公の性格が悪い小説などいくらでもあるが、私がそれをやって面白くなるのか。小説はストーリーテラーの視野を信用して読むものだろう。性格が悪い主人公の話を長々と聞いているのは読み手にとって苦痛なのではないか、とまあそんなことを考えていると、目的地へ向かって歩く時間も終わり、バスに乗っている時間も終わり、一日が過ぎ去る。

 最近考えることだらけで、頭のなかがひどく混雑し、まともに睡眠も取れない。課題、手土産、緑茶、睡眠、日記、読書、タコ足配線のようにからまり合う頭のなかを見て気づく。いったん落ち着いて思考を整理し、吟味する時間が足りないということを。

 最近は寒さにも気を取られる。脳内が「寒い」という思考でいっぱいになると他のことを考えられなくなるし、ふわふわなもので体を固めると冷気を防げる反面、暖かくて頭がぼーっとしてしまう。思索するにあたって、よくない季節だ。

 もっと布団にくるまって何事かを考えるような時間がほしい。芽生える思考を胸のなかであたためたい。師走を縫うようにして耽りたい。

 

忙しいと言いながら、遊戯王デュエルリンクスを再開してしまった。

さよーならあなた

さよーならあなた

  • カネコアヤノ
  • J-Pop
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