なめらかな日々

水のように生きたい

夏フェスのうがった見方

 自分がインドア人間であることを再確認しに、2daysの音楽フェスへ行った。

 ライブへ行ったことのある大好きなバンドや、ちょっと気になっているバンドまでいろいろなアーティストを見れた。雑感をここに記そう。


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--- 9/7 ---

 地元で開催されるフェスとしては最も好みなアーティストが多い音楽フェスである。

 地方誌で「日本のハワイ」と目される(完全に言い過ぎである)糸島の海水浴場で開催されるため、つまり辺境、片田舎。同伴者も私も車を動かせないから足がない。というわけで9:30、繁華街から出ているバスに乗り込んだ。小説や、映画や、音楽や、学校だりーみたいな話をしたと思う。

 会場に着くと少し雨が降っていた。レンレンとかいう台風の到来に不安がる私たち。最初はAwesome city club、オーサムはワンマンライブを見に行くくらい好きなバンドだ。かなりポップなバンドである。3月に付き合っていた人とそのライブに一緒に行ったことを思い出してちょっと嫌な気持ちになったが、新曲も良かったし、開幕から良いスタートを切れた。

 オーサムが終わると移動して、次はLUCKY TAPES。キラキラシティポップ代表格だ。すごく楽しみなバンドだったが、ここで音楽フェスとはなんたるか、を痛感した。

 このフェスは昨年も行って、OKAMOTO'SやらNullbarichやらを見に行ったのだけれど、HIP HOPのアーティストも招かれているから柄の悪い人々が多い。HIP HOP好き=柄が悪い、など偏見だろうか?(反語)自分の前にいる人のシャツの袖から刺青がちらりと覗いているのはもう当たり前になってくるし、アーティストの歌を真面目に聞かずおしゃべりするのが嗜みみたいな人もいる。フェスで治安が良くなる条件はふたつある。1、裏でHIP HOP系のアーティストがやっている。2、ミーハー層が知らない、マイナーなアーティストのライブ。これに尽きる。そしてLUCKY TAPESは知名度からか様々な人がひしめき合い、二番目に大きいステージだったけれど明らかにおさまりきっていなかった。

 近くでわーわー騒いでいるDQNに同伴者もうんざりしていたので早々に切り上げて、DYGLを見に行った。デイグローとか、ディグローと読む。本人たちを見るのは初めてだった。皆長髪で個性的だったが、ギターのまろやかでおっとりした顔がなんだか気になった。同伴者、というのが面倒になってきたのでこれ以降友人と呼ぶが、友人は感激した様子で音楽に揺られていた。

 

 その後、TENDRE⇨Tempalay⇨King gnu⇨ペトロールとまわった。どれも良かった。TENDREが渋くて泣けた。

DRAMA

DRAMA

  • TENDRE
  • R&B/ソウル
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 King gnuは一面に人がいて、人混みはそこまで苦手ではない私でもうんざりするくらいだった。ペトロールズはこれまた友人の推しである。出番の50分前にステージ正面前で待機して、「ペトロールズ地蔵」  アーティストを前で見たいがために早くから待機することを「地蔵」と呼ぶらしい  と化したわけである。

 

 手持ち無沙汰に私が自分の文章を読み返していると友人はそれを認め、「それ自分で書いたりしてるやつ?」と尋ねてきた。小説とか書くの、と。文芸サークルに属していることを覚えていたらしい。小説も書いてるけど、今はエッセイをやっているんだと答えると、マジかめっちゃ見てえと言われる。そこで、エッセイではないけれど金原ひとみの新刊について感想を述べた文章を読ませることにした。

nrrhn.hatenablog.com

性描写について言及しているけれど、まあそれに恥じらうような年齢でもないよなと思い改変はあまりしなかった。文庫本の巻末についてるやつみたいという賛辞をいただき、同時にもっと文章下手だと思ってたと少しけなされた。

 noteでエッセイを読んでいるというらしい彼は、それどこかに投稿とかしてる?サイト?と尋ねてきた。そーそーサイトでちょっとね、と濁すと、検索したら出てくんの?と最も危惧していたことを発想しはじめて焦った。そりゃあエッセイだし、検索しようと思えば簡単に見つかるだろう、と思う。絶対検索しないでねと念押しするも、頷いてくれない。

 

 そう話しているうちに長岡亮介(浮雲)が出てきて、眼前に彼がいることにちょっと震えた。友人はかっこいい、と羨望し、高揚した様子だった。ペトロールズについての知識はあまりない。ペトロールズのボーカルと浮雲ってなんか似てるなーと思っていたが、まさか同一人物とは思わなかった。MVがほぼないし、音源が手に入らない、みたいなことを友人から聞いた。そんなわけでLUCKY TAPESがカバーした「Profile」しか知らなかったわけだが、知らない曲だらけでも楽しめるステージだった。 

Profile

Profile

  • LUCKY TAPES
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 そうして一日目が終了した。帰路は辛く遠い、あまりにも遠い道のりに思えた。家にやっとの思いで着いたのは23時で、23:30に風呂を上がり、諸々のことをやって、0:00には眠りの世界へ没入していたと思う。

 

--- 9/8 ---

 バスに揺られて集合場所へと向かうときの心境は、疲労困憊という語がふさわしかった。前日の疲れが取れきっていなかったし、化粧やバスなどの移動時間も含めて7:15に起きなければならない。夏休み生活に慣れきった私にとって、いかにそれが苦痛であることか。行きたくないーと思いつつも、バスの中ではCHAIや中村佳穂を聴いてボルテージを高めていた。

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 午後の降水確率は100%だったのに、この日は終始晴れ。太陽光に心身を蝕まれた。この日のトップバッターはyonawo。次、向井太一。会場までの間向井太一が目前をスーツケースを引きながら通り過ぎていって非常に驚いたが、近くで見ても遠くで見てもやはり線が細い。「地元やけんもっと盛り上がってくれん?」と観客を煽っていたことで、向井太一が福岡出身であることを初めて知った。

 一旦別れ、友人は折坂悠太。私はKID FRESINOを観ようかなと思っていたけれど、頑として引かぬ日差しに疲れていたので海を見ながら日陰で休んだ。その後、CHAI。NEOかわいいを推しているからか、かわいい!という声が観客のほうぼうから聞こえた。私は熱射にくらくらとしていた。首の日焼けが気になったので、持参していたドレスコーズのタオルを肩からかけ、CHAIの音楽に肩を揺らしていた。

 その後友人と合流。やばかった、という彼。詳しく聞けばなんと、折坂悠太のパフォーマンスに感動してちょっと泣いたらしい。昼食をとることになり、友人にカレーをふたつ頼んでもらって中村佳穂を聴いた。途中はぐれてしまったので、私はタイムテーブルが被っているネバヤン  never young beachを聴きに行った。やはりネバヤンは海沿いで聴くと爽快感がある。king gnuの次くらいに人が集まっていた。

 その次はiri。かわいいー、という声が多数聞かれた。かなりクールな声質とは裏腹にビジュアルが整っていることが人気なのかもしれない。私もかっこいいなーと思いつつ、次に見るアーティストと被っていたため途中で切り上げて別のステージに向かった。友人と合流。くるりである。やはり人がたくさん集まっていた。最初に上海蟹を歌ってくれたことが嬉しかった。後ろの人が、くるりってあの独特なテンションの人でしょ、と言っていて、岸田さんはそれを裏切らないおっとりした京都弁を繰り出していた。楽器の音がじいんと沁みた。

 終わったあと、疲れたねと言って砂浜で休憩。日差しが眩しかった。

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 やばかったとうつむく友人は、くるりでまた泣いたらしい。普段泣かないんだけどな、とちょっと照れ隠しのように続ける。友人は元バンドマンゆえに楽器だとか音楽に関する知識はたくさんあるのだろうと思うのに、「やばい」「最高」と私レベルの感想を並べていた。「やばい」を今年言わないと決めていたのに、早速使ってしまったらしい。

 その後は今日で一番楽しみにしていたSIRUP。イントロが始まった瞬間上がる観客の声援から察するに、皆アルバムを聴きこんでいるのが意外に思った。

 

Do Well

Do Well

  • SIRUP
  • R&B/ソウル
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

  ステージが終わったあと、やばかったねーと話し合った。ヌーさん  友人はKing gnuのことを常にヌーさんと読んでいた  は黄色い声援があったけど、SIRUPはそういう感じの熱じゃなかったと言っていて、友人の言いたいことはなんとなく、観客の雰囲気からいって読み取れた。音楽のかっこよさから来る熱狂という感を受けたのだ。

 最寄り駅までついて、駅でありがとうと礼を言って友人とは別れ、帰宅した。

 

 家に帰ってから、夏フェスってカイジの世界みたいだな、と思った。これはプリーモ・レーヴィの完全なる影響だが、収容所も少し連想させるような感じだった。

 水分に飢えているのに飲み物は一つしか持ち込めず、通常80円の飲み物は200円で取引されている。そして圧倒的に日陰と座る場所が少ない。レジャーシートを持っているものしか安心して腰を下ろせないし、ベンチやハンモックは随時争奪戦が行われている。疲労と枯渇を抱えた者どもがうろつき回り、食物と水分を求めながら音楽を聴く。あるいは騒ぐ。サバイバルをしに来た感じの手触りである。音楽フェスには友人のダンスを見に来たという人もいるし、とにかく外で酒を飲みたくて来たという人もいるし、私たちのようにアーティスト目当てで来る人もいる。人種のサラダボウルである。

 

 それは差し引いても  来年も行くかはわからないけれど、好きなアーティストの音楽を聴けただけで満点だ。誘ってくれた友人に感謝したい。