なめらかな日々

水のように生きたい

愛さざめいて

 水って落ち着く、

 ゆらりゆらり、ざわざわしてるむねの中の音をかき消すように流線をからだに記して、ひざこぞうや肩の孤島をひんやりさせる。

 じきに水になっていく、うそみたいに冷たくなっていく、ふるえている、わたしの心臓とわたしをつつむ液体が、併せてひとつの生き物みたいに。水は流れる、記憶も流れる? からだに残った記憶は如何? 半券は、写真は、手の感触はどこにゆく?

 浴槽からあしを引き揚げて水滴を拭き取ってしまっても、やっと服を身につけて洗面室をあとにしても、寝る前に点けた部屋の小さな灯りはずっと灯ったままなのだろう。家具のないワンルームに取り残された私だけを照らして、むなしく輝いている。眠るまで消えなさそうな萎れた光。


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