なめらかな日々

水のように生きたい

夜を抜ければ

  時刻はAM2:20。仄かな灯りがついた部屋で卓上のヘッドホンを手に取り、装着する。室内灯のリモコンを操作すると部屋が真っ暗になって落ち着いた。亡霊のように現る携帯の光を煩わしく感じながら、サブスクリプションのアプリを開いて曲をタップし、まぶたを閉じる。

 綺麗な曲だ。音楽を語る言葉を持たないのが口惜しいけれど、いつ頃からか……おそらく3年前から聴き出したodolの「夜を抜ければ」。薄闇にひらいた眼で、自室の天井にいつか見たきらびやかな星空を映し出す。今日あった出来事のシーンを反復しようとするが、自意識の奔流に吸い込まれていく。この曲を聴くと夜の砂漠に深く深く没入していって、私の姿は夜闇に巻かれながらも私、という輪郭は夜にはっきりと刻まれる。この曲と、夜と、私だけが在ることで、知覚する私は密度が濃くなっていくのだ。

 郷愁感からくる寂しさに覆われるなか、誰かの手をにぎりたい、と思った。誰か、なんて不特定多数にぼかしているけれど、特定の相手を想ってのことなのか、ただ寂しさからくる衝動なのか、判別がつかなかった。誰かを深く安心させたいし、安心したい。しかし私が私である理由などない。だけど私は人をしんから想うことができる。そこが私の美点であろうかと思っている。私が受けた天命は献身だ。刹那的かつ限りある愛でもって他者を大切にしたい。

 余韻に浸りながら、そろそろ夜を抜けよう。

 

夜を抜ければ

見えなかったものにも

色がついて

それでも僕らの目には

映らないものばかりだ

 

 


odol - 夜を抜ければ (Official Music Video)