なめらかな日々

水のように生きたい

夏夜の湿り

夏の夜が、ふいに近づいてくる。自転車に乗って夜道を走る。するとまるで世界にわたし一人みたいに感じた。たっぷりと湿気を含んだ風は心地よい手触りでわたしに触れてきて、風切り音はごうごうと私の心を揺らす。セーラー服を着たわたしはあの日、自転車を力なく漕ぎながら涙粒をアスファルトに落としていた。制服の紺とミッドナイトブルーが同化して、わたしは透明人間のよう。闇夜に紛れた中学生の涙に振り向いてくれる人などどこにもいない。わたしにわずかな力を与えてくれたのは音楽だった。またあの夜を思い出しては過去の日々をいとしく思う、そんな季節。


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